死亡エンドを回避していたら、狂愛キャラが究極のスパダリになってしまいました!?



 ***



 今日は広場で大きなイベントが開催されているのか、人通りが多い。
 馬車を停めている場所までは、歩くと数分ほどの距離がある。

(馬車の制限はかかるけど、貴族街よりも街中が賑わっていて楽しいのよね)

 前世の感覚もあるからか、自分の足で外を歩く行為が、私の中で娯楽になっていた。
 もちろん私のほかにもお忍びで平民街を楽しむ令嬢はいるだろうけど、この世界ではプライドが高い貴族ほど自分の足で歩くことを厭う傾向にあった。特に年配者ね。

(それにしても、本当に人が多い。流されないように気をつけないと……)

 改めて先導するサリーの後ろ姿を見据えたときだった。

「あっ、すみませ……」
「……」

 とん、と右肩と手が対抗者とぶつかってしまった。
 私は反射的に謝ろうとするが、それよりも先に相手は目もくれず歩いていってしまう。

(行っちゃった。向こうが気にしていないのならいいけど)

 相手は黒い外套に身を包んでいたけれど、ぱっと見ても分かるほどに高身長だった。
 そして、少しふらついている印象が残り、何気なくぶつかった自分の手を確認すれば――。


(……これ、血?)

 
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