死亡エンドを回避していたら、狂愛キャラが究極のスパダリになってしまいました!?
婚姻前の貴族の娘が傷を負った。それも跡に残るほどのものを。この世界で傷が残ることは婚姻に大きく左右され、不利になる場合が多かった。
そして最悪の場合――婚約解消も視野に入れられるほどに。
(最悪どころか私にとっては最高! 禍を転じて福と為すとはこのことね。怪我を言い訳に婚約に対しても後ろ向きな発言をすれば、シルヴァンの頭にも解消の文字が浮かぶはず)
もしかしたら、小説として知ってるシルヴァンと、現実のシルヴァンとでは性格に差異があるかもしれない。
そこまで狂気的な一面はないのかもしれない……そう思っていたりもしたけれど、彼を前にしてすぐに確信してしまった。
(絶対に、この人は私の手に負えない。もう、オーラがこんなにも出てますから!)
転生者特権なのかなんなのか、当たらずともこの直感には従った方がいいと、私の心が訴えている。
やっぱり死なないためには、シルヴァンを避けて通るのが一番現実的だという考えに至ったのだ。
「小公爵様」
「……、うん?」
シルヴァンはぴくりと片眉を動かす。
耳を傾けると、彼の片方の耳朶に垂れるピアスが揺れた。