死亡エンドを回避していたら、狂愛キャラが究極のスパダリになってしまいました!?
「婚約式ではあまり言葉を交わせませんでしたが……小公爵様の本意でなければ、婚約の解消も私は受け入れます。あなたを縛り付けるつもりはありません」
瞬間、こちらを見つめる赤い瞳がわずかに開かれる。
「おかしいな。勘違いでなければ、君は俺との婚約に積極的な様子だったはずだけど?」
そう言われて思わず内心「ん"ん"ん"」と唸る。
とはいえ、婚約式の時の私の様子を見れば誰だって思うだろう。
「婚約式の場では、気が昂って冷静さに欠けていたといいますか……事故で背中に消えない傷跡ができてしまいましたし、こんな体では公爵家に嫁ぐことも憚られると考えました」
即興での理詰めにしては上出来だと自分を褒めたい。
実際のところ普段は晒すことのない背中傷なんて、これっぽっちも気にしていないわけだけど。
「そう。それが君……エリザの本心だったというわけだね」
「ええ、ですので」
もう一押しだと思わず前のめりになりながら、肩にかけていたショールの端をぎゅっと掴んだ時である。
「……ふっ」
不意に、シルヴァンは笑みを浮かべた。