もうごめん、なんて言わないで
高校時代の俊介は好きだと言ってくる全員に同じ返事をしていた。
『誰とも付き合う気はないんだ』
アイドルみたいな学年一かわいいと言われている子にだって答えは変わらず、結局卒業まで誰とも付き合うことはなかった。
高校三年の冬、私はサッカー部を引退する日に告白した。
フラれて気まずくなるのが嫌でその日しかないと決めていたけれど、心のどこかでは他の女の子たちと違うと密かに思っていた節があった。そう感じてしまうほど優しくされていた自信があった。
わざわざ名前で呼ばせてきたり、迷わず手を繋いできたり、休みの日には不意に電話をかけてきた。
付き合ってもいないのに思わせぶりな態度は、彼にとって特別だからだと勘違いして自惚れていた。
でも、なぜか彼の決まり文句すら聞けずに何度も、ごめんとだけ言われた。
私はパンドラの箱を開けた。
絶妙に保っていた関係は崩れ、話すことすらできなくなった。