もうごめん、なんて言わないで

 本当は俊介と再会するのが怖くて、今日ここに来ることも迷っていた。

 だけど今は、来てよかったと思っている。


「こうやって集まるとみんな変わらないよね」


 自然と顔が綻んだ。しみじみと言うと、立ち上がった俊介が隣に並んだ。


「変わったよ」


 目が合った彼は真剣な顔をしていた。


「白河は綺麗になった」


 真っ直ぐ私を見つめていて、想定外のセリフが頭の中で反響する。


「酔ってるの? 飲み過ぎだよ」


 咄嗟にお酒のせいにして冗談っぽく笑う。

 やっと慣れてきたところだったのに、また勘違いしてしまいそうだ。


「高校のころから美人だったけど、正直空港で見たときは綺麗すぎて焦った」


 追い討ちをかけるような言葉が私の心をかき乱す。

 どうしてそんなこと言うの?

 真に受けてはいけないと分かっている。きっと意味はない。俊介はさらりとこういうことを言ってしまえる人だ。

 それなのにどこかで期待して妙にドキドキとしてしまう私は、本当に馬鹿な女だ。


「そうだ、慶タローに連絡しなきゃ。心配してるかも」
「ああ、そうだな」
「さすがにもう戻れないし、先にホテル帰ってた方がいいよね」


 上手く誤魔化せただろうか。

 どう答えたらいいかも分からずに話題を変えようと、鞄から携帯を出そうとした。

 その瞬間、サーッと血の気が引いていった。


「うそ」


 ついさっきまでクラッチバッグを手で持っていたはずだ。それなのに、今あるのは彼のジャケットだけ。


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