もうごめん、なんて言わないで
遡ること半年前、長らく使われていなかったグループのトーク画面が動いた。
【ご報告。この度、結婚することになりました。つきましては九月二十五日に結婚式を挙げるのでぜひ来てくれると嬉しいです】
スポーツが盛んな進学校、英高校でサッカー部のマネージャーをしていた頃から七年が経った。
部の中でもムードメーカーだった駒井くんからのメッセージを見て、動き出した画面には懐かしい部員たちが次々に、おめでとうと言葉を残していった。
結婚式にはみんなふたつ返事で絶対行くと返し、今日を迎えている。
でも、あのときはまだ国際結婚をして式場がアメリカにあるなんて誰も想定していなかった。
そのうえ招待してくれるという駒井くんの言葉に甘えたら、まさかプライベートジェットへ乗ることになるとは夢にも思わなかった。
結婚式を二日後に控えた張本人は先ほどから人一倍楽しそうで、みんなと一緒に盛り上がっていた。
「あー、またやってるよ。なんで男っていつまでもああなのかな」
視線の先にははしゃいでいる大人たちがいて、杏奈は漆黒の長い前髪をかきあげて呆れたようにため息をつく。
二十六歳になっても、彼らはすぐに昔の感覚を取り戻して高校生のようにはしゃいでいた。
通路から顔を出し、うるさいと愚痴をこぼしながらも杏奈と目を合わせて吹き出すように笑う。
懐かしい騒がしさは、まるでタイムスリップしたかのように青春時代を色濃く思い出させた。