もうごめん、なんて言わないで


「ねえ見て」


 私に気づいた彼女が自動ドアの方を指さした。


「あの人、さっき外片しに出たときもいたのよね。かれこれ一時間くらい経つのに、まだいる」


 視線の先に目を向けると、路肩に停めた車のそばで男性が立っているのが見えた。

 シルエットには見覚えがある。まさかと思いながら固まる私は、目を疑った。

 あれは、俊介だ。

 慌てて外へ出ていくと、なぜか私より先に旭先生が彼に近づいていくのが見える。

 なにか話しているのが分かり、歩くスピードが速まった。


「先生」


 小さく声を出したら、ふたりの顔がこちらを向いた。

 そして、俊介と目が合う。

 一番会いたかったときに音信不通であれほど私を避けていたというのに、今更になってどうして何度も現れるのだろう。

 彼の意図が分からずに、じっと視線が交じり合ったまま目が離せなかった。


「仕事終わった?」


 旭先生の優しい声ではっとする。

 目が合うと、少し悲しげに微笑んでいた。


「ちょっと話せない?」


 俊介は構わず私に話しかけてくる。

 ふたりと交互に目が合い、どうしたらいいか分からない。俯くしかなかった。


「少しでいいから」
「ごめん、これから予定があるの」


 続けて話す俊介が歩み寄ってくるのが分かり、反射的に後ずさった。

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