もうごめん、なんて言わないで


「俺、まだ間に合う?」


 呼吸を整えながら目を瞑ると、彼に優しく抱き寄せられた。


「やっぱり美亜じゃないとダメなんだ」


 その瞬間、嬉しさのあまり視界が涙でいっぱいになった。


 頭では何度も考えた。

 このまま信じていいのだろうか。
 また同じ結末を迎えるのではないか。
 本当にそれでいいのか。

 たくさん自問自答した。

 だけど、どれだけ頭で考えたって答えはひとつしかない。

 私の心が俊介を求めてしまっていた。


「後悔しない?」


 耐えきれずにこぼれた涙が頬を伝い、彼の気持ちに応えるようにがっしりとした背中へ手を回した。


「香織さんじゃなく、私を選んだこと」


 その瞬間、真空の泣き声が家中に響いた。

 ゆっくり俊介から離れると、彼は困惑した顔をしていた。

 私を探すように泣き叫ぶ声を聞きながら、ずっと抱えていた秘密を打ち明けようと決心する。


「真空は俊介の子だよ」


 私たちの未来を左右する最大の秘密。

 告げた瞬間、怖くて怖くてたまらなくなった。


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