もうごめん、なんて言わないで
自分でも一瞬、なにが起こったのか分からなくなった。
「真空のこともあるし、俺はちゃんとあの子の父親になりたいから」
ぼんやりと彼に見惚れる。こんなに幸せでいいのだろうかと信じられない言葉に耳を疑いながら、体はふわふわとしていた。
「美亜?」
「あ、ごめん。あんまりいきなりで、普通にびっくりして」
覗き込まれ、顔が熱くなる。意味もなく髪を触って顔を隠した。
俊介と真空と家族になる未来は、私がずっと夢見てきたもの。
でも、まだまだ遠くぼんやりとした奇跡みたいなものだと思っていたから、こんなにも早く目の前に現れるなんて心の準備がまるで追いついていなかった。
「いきなりじゃないよ」
すると、俊介がぼそっと言葉を落とした。
「香織のこともあって何度も諦めなくちゃって思ってきた。だけどどうしても諦めきれなくて、結局美亜のこと振り回してばっかだった」
彼はゆっくり体を起こし、シートに頭を預ける。
「でも俺の中ではずっと美亜以外には考えられなかったんだ。だから全然いきなりなんかじゃない。もう絶対離したくないから」
握られていた彼の手に力がこもる。真剣な気持ちがじわじわと伝わってくるようで、嬉しくてたまらなくなった。