もうごめん、なんて言わないで

 鼓動がどんどん速くなっていくのが分かり、彼しか見えなくなっていた。


「じゃあ」
「あ、待って俊介」


 咄嗟に引き止めた私は、振り返る俊介を見て自分の腕をぎゅっと掴んだ。


「私、ちゃんと話してくるから。ちゃんとはっきりさせてくるから。そうしたら……さっきの返事してもいいかな」


 もう答えは決まっていた。

 早く彼の胸に飛びつきたい。何度もそう思いながら前のめりになる気持ちを必死に堪えて、真っ直ぐ瞳を見つめた。


「待ってる」


 視線が交じり合い、彼が穏やかに笑う。

 去っていく後ろ姿を見送ったあと、すぐに携帯を手に取った。


【私もお話があります】


 送信ボタンを押した私の心にもう迷いはなかった。








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