もうごめん、なんて言わないで
「もう昔のこととか言ってたくせに、やっぱりまだ青山くんのこと……」
「あー!」
慌てて出した声は想像をはるかに越えて大きかった。目を見開いて固まる杏奈の前で口を押さえる。
恐る恐る周りを見渡すと、先程まで興奮の中にいた男性陣も静かになってこちらを見ていた。
「美亜ちゃん?」
駒井くんの声に反応して顔を向けたら、なぜかその横にいた俊介と目が合ってしまった。
ふたりの間だけ時が止まったようにお互いを見続けたまま視線をそらせずにいる。耐えられずに先に顔を伏せたのは私の方だった。
ほんの数秒間がとても長い時間のように感じて、心臓が破裂しそうになる。
「ねえ、早くホテル案内してよ。荷物置いてどっか行きたくない?」
すかさず杏奈が間に入ってくれた。
みんなの背中をバシバシ叩きながら歩みを進ませ、私と俊介だけが取り残される。
しかし、お互い黙ったままだった。
「美亜、行くぞ」
見かねた慶タローが戻ってきて強制的に連行される。
後ろ髪引かれる思いで半身振り返ると、私たちの間にあった七年前の記憶が一気に流れ出した。
ずっとふたをしていた想いが動き出そうとしていた。