もうごめん、なんて言わないで
辺りは暗くなり、ステーキハウスで食事をしてからホテルのロビーに集まった。
「おお。これはまた」
全身黒で統一したブラックコーデで私は膝丈の少しタイトめなドレスワンピースに着替えた。
クラッチバックを手に後ろで簡単にまとめた髪を触りながら、ジロジロと見られる視線に恥ずかしくなる。
「なに?」
「やっぱりふたりともこういう服着ると美人が際立つというか」
駒井くんの言葉にこそばゆくなりながら隣に立つ杏奈を見る。
ブラックブルーのオールインワンに身を包み、小柄なわりに足が長い彼女はハイウエストの服でさらにスタイルの良さを際立たせていた。
当の本人はフロントに置いてあったガイドブックを真剣に見ていてこちらの話なんて聞いてもいない。
周りの視線に気づいたときにはきょとんとしていた。
せっかく集まるなら同窓会も兼ねようと、私たちは予定より二日早く日本を発った。
これからホテルの一階に併設されているカジノ場へくり出す。
世界最大級のカジノ街と言われるだけあって、どこもかしこもきらびやかな空間で圧倒される。
駒井くんも今日は朝までカジノだなんて盛り上がっていた。
「悪い、遅れた」
みんなでロビーに集まっていたところへ俊介が遅れてやってきた。
ストライプのシャツに柄物のネクタイを締め、ライトネイビーのスーツで決める。
男性陣がシンプルなタキシードや襟付きのワイシャツにジャケットという姿で並ぶ中、目立つ彼の格好は全員の目を釘付けにした。