お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。




ふたりで静かに花火を見て。

誰もがお祭りの余韻を抱えながら家路をたどる頃、私たちも腰を上げた。



「イタッ」


「…なに、怪我した?」


「ううん、…鼻緒で擦れちゃったみたい、」



慣れない下駄でたくさん歩いたからかな…。

階段もいっぱい上ったし、でこぼこした道も往復した。



「え、ナナちゃん…?」



暗闇のなか、なぜか私の前にしゃがんでいる男の子は。

「はやく」と、間違っていなければ私をおぶってくれるつもりらしい。



「そ、それはさすがに悪いよ…!家までならなんとか歩けるから…!」


「だから今さらすぎ。あんなに走らせといてなに言ってんだよ」


「うっ…、」



ありえない、こんなのありえない。

義弟くんにおんぶされるなんて、私はなんてお姉ちゃんなんだ。



「お、重くない…?」


「重い」


「えっ、だよね…!?下ろして下ろして…!」


「それ以上暴れたらそこの川に落とす」


「………」



ほら、初めてばかりだよ。

ナナちゃんにはもう、たくさんの“初めて”をあげちゃってるし、与えられてる。



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