お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。
「ナナちゃん、」
耳元で声をかけると、ピクッと反応してくれる。
私をおぶる力が少しだけ強まったことが彼なりの返事なんだと思っておく。
「浴衣、すっごく似合ってる…よ」
なんか言い終わるギリギリで恥ずかしくなっちゃった……。
昼間だったらみんな振り返ってただろうから、暗くてよかった。
だってそうじゃないと同じ高校の生徒にバレちゃってたから。
このお祭りが夜に行われるもので助かった。
って思わなきゃいけないんだよね。
うんうん、そうだそうだ。
「……あんたも、か、」
「え…?私もかって、なにが私もなの…?」
「か…、蚊だ」
「あっ、蚊…?あはは、私も腕に刺されちゃってるよ」
「いやちがう」
え、ちがう…?
どうしたんだろうナナちゃん。
いつものクールな姿とは正反対で、普段は消えかかっている年下感がある。
「か、…かわ、」
「皮…?」
「……川に落とす」
「えっ!?だからどうして…!?」
「…うるせ」
───その翌日。
目が覚めると、とあるノートが枕元に置いてあって。
“誰かさんに過去イチ走らされました。それよりもっと食べろ。でも、浴衣は良かったと思う”
と、新しいページには書かれていましたとさ。