お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。
これが高校生の夏なんだろうなあって、今しか味わえない特別な時間だ。
「ゆら。よかったら夏休み、試合観に来ない?」
「えっ、試合?」
「うん、夏休みの最初の土曜日にいきなり前回の大会でベスト4に入った学校と決まってさ。ほら、七夕まつりに行ってやれなかったリベンジ的な?」
「わあ!行く行く!!」
たまに練習風景を覗いてみるだけで、きちんと見たことがなかった。
ソフトボールのルールもぜんぜん知らない私でも、大切な友達の試合だなんて行くに決まってる。
「ナナちゃんも誘ったら行くかな…」
「ちょ、さすがにウサギはいろいろ問題ありすぎるだろ」
「あっ、そっか…、じゃあ私だけで行くね!」
「うん。ぜったい勝つ」
ここまで雅の気合いが入っているのはキャプテンだからという理由もあるんだろうけれど。
実は大きな理由がひとつあることを私は知っている。
そう、彼女が憧れる甲斐田先輩だ。
なんと野球部は地区大会を突破し、次の地方予選でも功績を残して、ついには甲子園への切符を手にしたとのことで。