お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。
ねえ雅、それまでの関係が壊れてしまうことに怯えることは誰にだってあるよ。
私だってなんとなく、いつかいろんなものに怖じ気づく日が来るんじゃないかなって考えちゃうときはあるから。
でも、そんな見えない恐怖や、確実でもない未来のことばかり考えて何もできないまま終わっちゃうほうが苦しいよ。
という言葉が、いつかの自分に対して刺さること。
このときの私はまだ、思ってもみないわけで。
「スポーツドリンク2本よし、タオルよし、手持ち扇風機よし、軽食よし、モバイルバッテリーよしっ、準備万端!!」
そしてやってきた当日。
清々しい朝のなかにもセミの声が聞こえるほどの夏。
照り輝く太陽、ジリジリと反射するアスファルト。
《最高の試合日和!》と、雅がメッセージで言ってきたほどの晴天。
「じゃあお母さんもそろそろ行くけど、また帰り遅くなるならメールか電話してね?」
「うん。行ってらっしゃ~い」