お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。

「もしかして…暑さにやられた…？ウサギは弱いって聞くし」


「…ううん、そうじゃないの。なんかね…過去の女的なのが登場しちゃって…」


「……ゆら、ウチやばい。今ならどんなことでも信じられそうなメンタルしてる」



わりと信じてくれてるけどね、雅。

ここまでの情報量でもナナちゃんをまだウサギとして見てくれるのなんか、きっと雅くらいだ。



「続けていい…？」


「うん」


「それでね？その過去の女の前で…私は“家族”としての自分を取っちゃったんだけど……なんか、モヤモヤしてて、」


「……それは…どういう…？」


「…わかんない」


「そりゃそうだよな…、わかりたくないよな、それは」


「……うん」



ちゃんと噛み合っているのかは分からないけど、とりあえずはそういうことだ。

あのとき“お姉ちゃん”として叱ってしまった私に、彼はすごく悲しい顔をした。


それから会話はぜんぜん無くて。

お母さんとおじさんは「喧嘩でもしたの…？」なんて心配してくる毎日だ。