お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。




「それ、そのメスが今後どう動いてくるかにも懸かってくるだろ」


「…メスって言わないで雅。大人しくて謙虚そうで一途な、かわいい女の子だよ」


「……おまえの基準に合わせてたら頭狂うんだよ」



詳しく聞けないし、そんなことを交換ノートに書いてしまったら返却されなくなっちゃうだろうから。

私は何事も無かったかのように雑誌の撮影でのことを楽しげに綴(つづ)った。


でも、ナナちゃんからのお返しは未だに無く。



「じゃあ次…、雅の番ね」


「…おー」



なんとなく、なんとなくだけど浮かぶ人物がいる。

雅がここまで落ち込むなんて、ぜったい彼が関係していることのはずだ。



「…甲斐田先輩、試合中に怪我したらしいんだ」


「え…」


「甲子園も初戦敗退。それを自分のせいだって責めてる」



ぐしゃっと、ゼリー状の飲料水を握りしめるように口に含んだ雅。


甲斐田先輩はスライディングで相手選手と厄介な接触をしてしまい、右足を骨折してしまったらしい。

はやくても全治2ヶ月だと。


彼は野球部の主将であり、顧問からも部員たちからも甲子園優勝へ導いてくれると期待されていた人。



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