お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。




ほんとうの目当ては私じゃなかったんだろう。

けれど奴は相手にしなかったから、彼女は私に声をかけてきたんだと。



「まさか十波くんのお姉さんだったなんて…びっくりしました。こんなことあるんですね」


「…そうだね」



これも何かの縁なのかな、と視線を逸らしながらも精いっぱい目尻を下げた。



「ごめんね、あんなに生意気で」


「いえ…、変わっていなくて嬉しかった部分もあるんです」



なにをお姉ちゃんぶっているんだろう私は。

まだ出会って半年も経ってないくせに。


佳純ちゃんのほうがナナちゃんを知っている。

だって付き合っていたんだから。

彼は好きな女の子にはどんな顔をするんだろうって、本当は気になって仕方なかった。



「だからわたしもずっと変わらず過ごしていました。この髪型だって…中学生の頃とまったく同じなんです」


「そうなんだ…」



知らないなあ。

中学生の頃のナナちゃんを私はひとつも知らない。



< 169 / 261 >

この作品をシェア

pagetop