お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。
ほんとうの目当ては私じゃなかったんだろう。
けれど奴は相手にしなかったから、彼女は私に声をかけてきたんだと。
「まさか十波くんのお姉さんだったなんて…びっくりしました。こんなことあるんですね」
「…そうだね」
これも何かの縁なのかな、と視線を逸らしながらも精いっぱい目尻を下げた。
「ごめんね、あんなに生意気で」
「いえ…、変わっていなくて嬉しかった部分もあるんです」
なにをお姉ちゃんぶっているんだろう私は。
まだ出会って半年も経ってないくせに。
佳純ちゃんのほうがナナちゃんを知っている。
だって付き合っていたんだから。
彼は好きな女の子にはどんな顔をするんだろうって、本当は気になって仕方なかった。
「だからわたしもずっと変わらず過ごしていました。この髪型だって…中学生の頃とまったく同じなんです」
「そうなんだ…」
知らないなあ。
中学生の頃のナナちゃんを私はひとつも知らない。