お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。
あまり力を加えすぎないように振り向かせると、やっぱり泣いていた。
こういう場合ってどう声をかけてやればいいんだ。
なんで泣いてんの。
ごめん、あれは俺も言い過ぎた。
泣かせるつもりじゃなかったんだよ、本当に。
ひとつも言えない俺の前で「ズッ、ズッ」と、静かな音だけが響いていた。
「…ちょっと来て」
「わ…っ」
この涙を見るくらいなら、こいつが望む関係になったほうがいいんじゃないかって。
そう思って一瞬だけ揺らぎそうになったけど、そこで流されるほど弱い気持ちじゃない。
こいつには好きな男がいて、その雅って奴が別の女を選んで、こいつが振られたとする。
そんな男なんかやめて俺にすればいい───って思うくらい、それくらいの気持ちなんだよ俺は。
「泣くなって。…ごめん」
「…なな、と、くん」
なんでナナちゃんって呼ばねーの。
お前は何に頑張ってんだよ。
なんでそこまで頑張るんだよ。
そのまま俺の部屋に連れてきて、とりあえずベッドに座らせた。