お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。
「それで幸せなの?楽しいの?…窮屈すぎんだろ」
我慢ばっかしてんじゃねーよ。
けど、なんとなくだけど、こいつは「そんなことない。幸せだよ」って満面の笑みで言ってくるんだろうと思った。
なんで?って聞くと、「ナナちゃんがいるから」なんて答えんのかな。
「……ほんと、アホ」
俺の好きなものとか、すげえ聞いてくるけど。
俺だってあんたの好きなものを知りたい。
食べ物は何が好き?ハマってるものは?
好きな芸能人は?音楽は?
嫌いなものは?行きたい場所は?
なあ、知ってる?
俺たちってまだ、お互いの誕生日すら知らないんだよ。
「十波 七兎、1月20日生まれのB型。嫌いなものはニンジンと雷。好きなものは冷凍パスタと……」
俺のベッドに起こさぬよう寝かせて、そっとブランケットをかけてやる。
王子様なんて柄じゃない。
そんな言葉すら恥ずかしくて聞いてられないのが俺だ。
「いま俺の目の前で眠ってる、───…城崎 ゆらってひと」
だからもしこいつがその最中に目を覚ました場合は、とりあえずデコピン5回は食らわせてやると思いながら。
目を閉じる女の子の前髪を上げた場所に、ひとつ落とした───。