お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。
「ふー、ただいま~」
「あ、手伝います」
「あら、ありがとうね」
両手いっぱいの買い物袋を受け取ってキッチンへ運ぶ。
リビングに俺しかいないことが珍しいと思ったのか、おばさんは次に首を傾けた。
「七兎くんひとりなの…?ゆらはまだ帰っていないの?今日は半日授業だったはずよね?」
「なんか疲れてるみたいで、寝てます」
「そうなの?あの子さいきん食欲もなかったし、具合でも悪いのかしら…」
そうやって気にかけてやってほしい。
この一瞬だけじゃなくて、あいつが起きたらいちばんに心配してやってほしい。
「あの、おばさん」
「ん?なあに?」
「ゆらのこと…めいっぱい可愛がってやってほしいっていうか、」
「え?」
「なんていうか、とりあえず母親としての激しいくらいのスキンシップをしてやってくれませんか」
おばさんとゆらは、どこか同年代の友達同士って感じがする。
でもやっぱり母親は母親で、あいつは娘でもあるから、できるときはできる限り甘えさせてやってほしい。
「ゆら…、なにか悩んでいたりするの?」
「悩んでるというより…あいつは我慢しやすくて責任持ちやすくて、ひとりで抱えこむタイプだから」