お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。




それでそのまま誰にも相談せず、自分のなかで無理やりにでも自然消滅させる。

小さな頃からの癖というものは、なかなか取れるまで時間がかかるし難しいけど。


たぶん、本当のあいつは誰よりも寂しがり屋だから。



「ふふ、ほんっとうに私ったらダメね」



するとおばさんは額に手を当てながら、自分自身に呆れるように言葉を放った。



「それはね、昔から分かってはいたの。あの子にそういう癖を付けさせてしまったのは母親である私の責任だから、ずっと心配してたのよ」



仕方ないことだと思う。

母親は子供にとって何よりの存在でもあると同時に、いちばん守りたい存在でもあるから。


母親の悲しい顔を1度でも見てしまえば、繊細な心を持った子供は2度と繰り返さないように心がけてしまう。


それが積み重なって、気づかないうちに“我慢”となる。



「父親がいる家庭の子供と同じように、お金面では我慢させないようにしようって思っていたけど……ちがうところで我慢させちゃってたのね」


「…今からでも、ぜんぜん遅くないと思います」


「ええ、そうね。ありがとう七兎くん。あ、もちろん今は七兎くんのことも同じようにおばさんは可愛がるわよ?…小百合(さゆり)さんのぶんもね」


「!」



その名前をつぶやきながら柔らかく微笑んだおばさんを見て、“母親”というものはすごいと思った。



< 202 / 261 >

この作品をシェア

pagetop