お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。
そう、“また”来た。
休み時間の甲斐田 遥真ではなく、今度はお昼休みの十波 七兎だ。
先輩女子たちのうっとり視線や誘い文句に応えることは一切なく、スタスタと向かってくるは私の席。
「グミ、すき?」
「え、ぐみ…?」
「新発売なんだって、これ」
あの日、半日授業で帰りが早かった日。
途中で立ち寄ったスーパーでお寿司8貫セットがお買い得になっていたから、私は買って帰った。
お母さんもいなくて、ナナちゃんも帰ってなくて、ひとりでダイニングテーブルで食べていたら、まさかのワサビがとんでもなくツーンときて。
そんなグッドタイミングでよそよそしかったナナちゃん(そのときは七兎くん)登場。
そのあといろいろあって、気づけばベッドに寝かされていたんだけど…。
起きたとき、なんと世界が変わっていた。
「う、うん…、すき。…ありがとう」
「…よく聞こえなかった。もういっかい言って」
「え…、す、すき…だよ」
「……いーね」
そう、こんなふうにめちゃくちゃ優しくなったのだ。
夢なのかもしれない。
私はまだ夢のなかにいるのかもしれない。