お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。




そう、“また”来た。

休み時間の甲斐田 遥真ではなく、今度はお昼休みの十波 七兎だ。


先輩女子たちのうっとり視線や誘い文句に応えることは一切なく、スタスタと向かってくるは私の席。



「グミ、すき?」


「え、ぐみ…?」


「新発売なんだって、これ」



あの日、半日授業で帰りが早かった日。

途中で立ち寄ったスーパーでお寿司8貫セットがお買い得になっていたから、私は買って帰った。


お母さんもいなくて、ナナちゃんも帰ってなくて、ひとりでダイニングテーブルで食べていたら、まさかのワサビがとんでもなくツーンときて。


そんなグッドタイミングでよそよそしかったナナちゃん(そのときは七兎くん)登場。


そのあといろいろあって、気づけばベッドに寝かされていたんだけど…。

起きたとき、なんと世界が変わっていた。



「う、うん…、すき。…ありがとう」


「…よく聞こえなかった。もういっかい言って」


「え…、す、すき…だよ」


「……いーね」



そう、こんなふうにめちゃくちゃ優しくなったのだ。

夢なのかもしれない。
私はまだ夢のなかにいるのかもしれない。



< 209 / 261 >

この作品をシェア

pagetop