お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。
“お母さんがいなくなって涙を流す七兎へ”
“小学校を卒業した七兎へ”
“中学生になった七兎へ”
“お友達と喧嘩しちゃった七兎へ”
”お父さんとうまく話せなくなっちゃった七兎へ”
間違いなくそれは、成長してゆく未来の息子へと母親から送られたものだった。
いつか人生に迷って、つまずいて、悩んだとき。
その場面場面で見られるようにと、ひとつひとつ封に閉じられていた。
“中学校を卒業して、高校生になった七兎へ”
“大切な人ができた七兎へ”
“いつか新しいお母さんができた七兎へ”
“高校を卒業した七兎へ”
“社会人になって追い詰まっちゃった七兎へ”
“一生一緒にいたいと思う存在ができた七兎へ”
こんなにも温かで大きな愛情が、この段ボールに隠されていたんだと。
中身を読んでいなくても、表紙の文字を見ただけで、私は涙が止まらなかった。
「おじさん、これ、ナナちゃんは知ってるの…?」
「…七兎は僕のことを母親を殺した存在だと恨んでいるからね。今まで、伝えたくても伝えられなかった」
彼のお母さんが亡くなってから、おじさんとナナちゃんには溝ができてしまったんだろう。
面と向かって話す機会を今までお互いが逃げるように避けていたんだ。