お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。
それが私が伝えることのできた、唯一の気持ちだった。
「ゆら、もう隠したくないから言うけど。
…小山田とは中学のとき付き合ってた」
「…うん」
「だからこそ、しっかり解決させてくる」
がんばれ、応援してる。
また何かがあってナナちゃんが落ち込んでしまったら、そのときは私の出番だ。
背中を撫でて、大丈夫だよって言ってあげるの。
「そう思えるようになったのも、ゆらのおかげだ」
「…うん」
「だから俺にとってもゆらは……大事なんだよ」
私もだよ、私もナナちゃんのことが大事だよ。
家族にすら思ってもらえなくてもいい。
ナナちゃんの優しさは形に囚われなくて、枠(わく)に嵌められないんだってことを知っているから。
「…ナナちゃん」
「なに?」
すぐに答えてくれる。
こんなにも温かな声で答えてくれる。
出会ったばかりの頃と比べると、長足の進歩だ。
「…ごめん、忘れちゃった」
「じゃあ、思い出したら言って」
「…うん」
“本当はずっと、ナナちゃんのことが好きでした。だから佳純ちゃんのところには行かないで。”
いちばん下に小さく小さく書いた文字はすぐに消して、綺麗な言葉だけを綴って渡した最後の交換ノート。