お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。




優しく抱きしめられて、背中を撫でてくれる。

雅の震える声を聞いて、鼻の奥から込み上げてくる想いは、瞳から溢れんばかりの涙となって落ちた。



「ダメでした……っ」



無駄だとは思っていないよ。


ナナちゃんのために、ここまで必死になって毎日を送ってきたこと。

髪を切っても、地味な服になっても、悲しくなんかなかったよ。


好きな男の子のためならあそこまで頑張れちゃうんだ私、って、むしろ誇りに思ってる。



「すごいよ、ゆらはもう伝説だって。ウサギ界で言ったら神の領域だって」


「…っ、……っ」


「そんな子と友達になれたウチ、ほんと人生の財産でしかない」


「っ……、っ、」


「…ちゃんと見てくれてる奴は絶対いる。その頑張りは、きっと誰かに伝わってるよ」



そうだといいな…。


きっと伝わってくれたから、彼は前に進もうと思ってくれたんだ。

だから私の役目は果たせたんだ、お姉ちゃんとして義弟を救うことができたんだ。


なんとか無事に手懐けることができたんだ───って。


そう自分に言い聞かせながら、雅の腕のなか、ふにゃりと涙だらけの情けない敬礼をした。








< 231 / 261 >

この作品をシェア

pagetop