お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。
優しく抱きしめられて、背中を撫でてくれる。
雅の震える声を聞いて、鼻の奥から込み上げてくる想いは、瞳から溢れんばかりの涙となって落ちた。
「ダメでした……っ」
無駄だとは思っていないよ。
ナナちゃんのために、ここまで必死になって毎日を送ってきたこと。
髪を切っても、地味な服になっても、悲しくなんかなかったよ。
好きな男の子のためならあそこまで頑張れちゃうんだ私、って、むしろ誇りに思ってる。
「すごいよ、ゆらはもう伝説だって。ウサギ界で言ったら神の領域だって」
「…っ、……っ」
「そんな子と友達になれたウチ、ほんと人生の財産でしかない」
「っ……、っ、」
「…ちゃんと見てくれてる奴は絶対いる。その頑張りは、きっと誰かに伝わってるよ」
そうだといいな…。
きっと伝わってくれたから、彼は前に進もうと思ってくれたんだ。
だから私の役目は果たせたんだ、お姉ちゃんとして義弟を救うことができたんだ。
なんとか無事に手懐けることができたんだ───って。
そう自分に言い聞かせながら、雅の腕のなか、ふにゃりと涙だらけの情けない敬礼をした。
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