お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。
七兎side




「クッキー、さんきゅ。…うまかった」


「た、食べてくれたの…?」


「うん。ぜんぶ、あのときと変わってなかった」



呼び出したのは俺だった。

学校が終わったあと、中間地点で合流してから移動した場所は、かつて通っていた中学校の近くにある小さな公園。


よくここで小山田と話した放課後をまた味わう日がくるとは、俺も思っていなかった。



「わたしは…変わっていないよ十波くん。あのときから、なにも変わってないの」


「…俺は変わった」


「え…?」



ベンチに腰かけた隙間は、付き合っていたときよりも空いていた。



「俺はもう、小山田を恨んでない」



あの頃と変わらないクッキーの味、そのおさげ髪。

俺の顔色を伺ってはビクビクする癖だって、わりと諦めの悪いしつこいところだって。


小山田は、あのときのまま俺に会いに来たんだと。



「中学のときと俺の家の前で会ったときは、さすがに感情が高ぶったけど…、最近になってなんであんなに怒ってたんだって自分に問いかけ続けたらさ。
結局はぜんぶ八つ当たりみたいなものだって気づいたんだよ」



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