お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。
涙をポロポロとこぼしながら、ぶんぶんと首を横に振ってくれる。
「大体さ、高岡西は遠すぎ。俺が朝弱いって知ってんでしょ」
「え…?知らない、よ…?」
「……ああ…、そう、だっけ」
自分で言っておいて驚いた。
そうだ、俺が朝弱いことを知っているのはあいつだけだ。
俺はそんなことすら小山田には見せられなかったのか。
「じゃあ雷が怖いってことは知ってる?」
「ううん…、知らなかった…」
「俺も小山田のこと、なんにも知らなかったんだ」
それはそれで良かったのかもしれないけど、裏を返せばお互いに知ろうとすらしていなかったってことだ。
「こ、これから知っていきたい…、わたしはやっぱり、十波くんのことが今でも好きだから…っ」
「小山田。俺、好きな人がいる」
はっきりと言い切った俺に息を飲んだ小山田は、わずかな沈黙を置いてから、小さく唇を開く。
「どんな…ひと…?」
根掘り葉掘り聞いてくるような女が嫌い───それは小山田も知っているはずだ。
でも聞いてきた彼女は、ここで俺が答えることを悟っていたんだろう。