お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。
そう言った俺に、「わたしこそありがとう」と、精いっぱいの笑顔でピリオドが打たれたタイミング。
「…あ。雨だ」
ザアアアアアーーーと、わりと大降りになって空から降ってきた。
すぐに小山田は折り畳み傘を出して俺に当てようとしてくるが、それを俺は断った。
「俺はそこの東屋で雨宿りして帰るから」
「で、でも…、もし雷が落ちちゃったら…」
「平気。もう、平気なんだよ」
雷そのものは平気ではないけど、俺をまた抱きしめてくれる存在がいるから。
それにさっき教えたばかりなのに心配してくれるとこ。
折り畳み傘を出したとき、当たり前のように俺に差してくれようとしたとこ。
そういうところが好きだったと、去っていく背中を見送った。
《大至急、深島(ふかしま)中学校近くにある公園の東屋に来て。雷落ちそうで死ぬかも》
たとえば友達とカラオケに行ってたり、カフェに行ってたりしても、そいつは俺のメッセージを受信すると必ず優先してくれるんだろう。
今だってものの数分で電話がかかってきた。
『今から行くけどっ、怪我とかしてない!?安全なところにいてね!?動いちゃダメだよ…!』
“ゆらっ!どこ!なに!何事だよ!?”
そんな電話のもっと奥から丸井センパイの声が聞こえてくる。