お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。




ファミレスを飛び出すと本当に雨が降っていて、折り畳み傘を出す前に構わず走る。

私を元気づける会を雅は開いてくれたのだけど、正直、居づらかった。


そこには甲斐田先輩も来てくれて、こういうときは多いほうが楽しい戦法で考えてくれたんだろうけれど……まあ、居づらかった。


初々しいカップルがナチュラルにイチャついているところを目の前で見つめるしかできない私の気持ち。



「どこっ、なんて中学校だっけ…!」



だんだん弱まってきた雨のなか、縁もゆかりもない中学校を目指して走る。

スマホを取り出して検索するために立ち止まるくらいなら、標識を探して向かったほうが早い。


ひとりで雷に怯えちゃってるかもしれない。

傘も持っていなくて、寒さに凍えているかもしれない。



「あったっ、深島中学校…っ」



ちょうど校門から出てきた数人は部活帰りの生徒たちだろうか。

その子たちに東屋がある公園の場所を聞いて、また全速力で走る。



「あのっ、誰のためにそんなに必死に走ってるんですかー!?」


「ちょっ、あんたなに聞いてんの!!」


「だって、なんか勇気もらえそうだから…!」



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