お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。
すると、そのなかにいたひとりが私の背中に向かって聞いてくる。
誰のために私はこんなに必死になっているんだろう。
誰のために何回も何回も空回って、それでも諦めずに走っているんだろう。
足を止めることも振り返ることもせず、空に叫ぶような気持ちで放った。
「っ、ずっと一緒にいたい人のためです……!!」
いつかの七夕まつり、短冊にもそう書いた。
ナナちゃんとずっと一緒にいられますように───って。
彼が私を呼んでくれるのは、頼ってくれるのは、決して私が期待しているものではなく。
“たまたま近くにいる年上だから”というだけの理由だとしても。
“いつも自分のために動いてくれる都合のいい存在だから”というだけの理由だとしても。
「はあっ、は…っ!つい、た……っ」
それでもいいよ。
もう、それでいいんだ私は。
だって───、
「やっぱ走ってきてるし。…ゆら」
この笑顔が向けられるなら、なんだっていい。
だってね、嬉しいことはひとつだけあるんだよ。
佳純ちゃんのことすら苗字で呼んでいた十波 七兎が、私のことだけは名前で呼んでくれるの。