お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。




自分でも忘れかけていた傷をハッと思い出して、私は膝小僧に視線を落とした。

擦り傷になった場所は皮がめくれて、目で分かるくらいに血がにじんでいる。


これはさすがに隠し通せるものじゃない。



「……うん」


「…アホすぎんだよアホ」


「わ…っ!ナナちゃんっ、まって、まって…!」



離れることを許さないよう、すぐにガシッと強めに後頭部に回った手。



「だっ、ダメだよそんなことしちゃ…!」


「…なんで?まだ家族とか姉弟とか言うつもり?」


「っ…、そうじゃ…なくて…っ」



佳純ちゃんと復縁したあとに違う女とキスするって、一体どういうことなの。

やっぱりルックスが良くても許せないことってある。



「そうじゃなくて?」


「っ、」


「ゆら」



そんなのされたら、私が忘れられなくなっちゃうからだよ。

一生の宝物になって大切にしていく思い出ナンバーワンになってしまう。


だからそんな酷(こく)なことしないでよ、ナナちゃん。



「膝、痛いだろ。帰ったらすぐ手当てしなきゃな」


「だ、大丈夫だよ」


「…なんで?」



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