お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。
なんで、…って。
あえて言わせようとしているみたいに聞こえる。
「な、ナナちゃんに…」
「俺に?」
「ナナちゃんに……、…会えたから」
これでしょ、これが聞きたかったんでしょ。
どーだ言ったぞ、これで満足?
なんて、拗ねてみたいのに。
どうしたって本心だから素直に言うことしかできない私は、ここでも惨めだなってちょっとだけ思ってしまった。
佳純ちゃんとどんな話をしたんだろう。
私とキスとか言ってるけど、その前に佳純ちゃんとしてるはずなのに。
ひどいよナナちゃん。
年上を弄んでそんなに楽しいか、十波 七兎め。
「……さすがにもう無理」
え、と。
引き寄せられた勢いに、私の戸惑いは掻き消されてしまった。
「───…ナナっ、…っ!!」
私はこういうものを、よく月曜日の夜9時から始まるドラマで見ていた。
雨のなか、傘も差さずにずぶ濡れになりながら、お互いの気持ちを確かめ合うように何度も何度も重ねるキス。
言葉なんかいらない、そんなものすら面倒だ。
ドラマの主人公たちはそう思ってるのかな…って、ドキドキしながら想像しつつ見ていたっけ。