お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。
平常心、平常心だゆら…!
頑張ってなんとか耐えるの誤魔化すの…!!
「十波って確か下の名前……“ななと”、だったっけ?」
「そ、そうだっけ!?」
「となみ、ななと……、ナナト、ナナ…、……ナナ?」
やめてっ、
それ以上考察することはやめて雅…!
そんな危ない考察はしちゃダメ…っ!
「てかこれ、髪型的にもゆらじゃん」
「ゴホッ、ごほっ…!」
思わず咳き込む私。
とくに風邪というわけでもなく、とてつもない動揺が喉に襲ってきただけだ。
雑誌に夢中な周りの女の子たちは、雅がまさかそんな爆弾発言をしているとは思ってもいないわけで。
「ゆら、もしもの話だぞ?もし、こいつが“ナナちゃん”だったら……わりと辻褄(つじつま)が合うんだけど。
そしてウチは逆にいろんな意味で安心する」
「っ…!」
ガタガタガタッ!!
今度は椅子から転げ落ちるような反応をしてしまう私。
「───ゆら」
そんなときだった。
雅の考察をもっと確信へと近づけてしまう声が教室のドア前から聞こえると、パワーアップした女子生徒の歓声に教室が揺れた。