お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。
ひとつは、家からめちゃくちゃ遠いところにしかないこと。
そしてもうひとつは、ナナちゃんは朝が絶望的に弱いということ。
だから家からいちばん近い場所にある、この共学高校を受けるしか無かったみたい。
「それにね、半径5メートル以内には近づくなとも言われちゃってて…」
「え、言われんの…?それって言われるもんなの?まじで?……やば」
「うん」
「“うん”はやめろ」
だからまずは距離感をしっかり掴んで、どうして女の子が嫌いになってしまったかを知らなきゃだよね。
じゃないと下手に関われないもん。
でもなあ……、それを知ろうとすることすらウザがられちゃうんだろうね、きっと。
「じゃあまた明日!雅、今日は本当にありがとう。これからよろしくね!」
「……今日だけでウサギに未知の可能性を感じたんだけど」
「へ?」
「…なんでもない。じゃあなー」
どこか引きつった顔をした友達に手を振って、覚えたばかりの家路をたどる。