お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。




「そ、それは…おねえちゃ───」


「ちがう、俺たちは姉弟じゃない。ただ一緒に住んでるってだけの…人間同士」



他人、ではないんだ…。

そうは言わないように言葉を選んだんじゃないかと思う沈黙を感じた。



「あっ、私はおにいちゃ…」


「それも絶対ない」



でも、後悔はしてないよ。

今だってそう。

少しずつ、ゆっくり、ナナちゃんに近づけている感じがするから。



「ゆらー?七兎くーん?ここにいるの…?そろそろ晩御飯───あら、お邪魔しちゃったわね」



それからお母さんのノック音に返事をする暇もないくらい、ふたり一緒になってノートに視線を落とす。

肩を並べては、間違っているところがあればすぐに指摘されて。



「だからちげえって。なんでこの計算式でそんな答えになるんだよ」


「ええっ、公式どおりにやったのに…」


「よく見とけよ。ここのxはこっちに代入すんの。……ほら、できた」


「あっ、本当だ!!2年生の問題なのにナナちゃんすごい……!」



でも私、男の子とふたりきりでテスト勉強するなんて初めて。


相合い傘をして手を繋いだのだって初めて。

誰かのために服装や雰囲気を変えて、髪を切ったのだって。


ぜんぶぜんぶ───…初めてだよ。



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