お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。
第一、中間テストはナナちゃんのおかげで無事に乗りきったわけだし。
「あ、そうだゆら。おまえ行くの?」
「ん?行くって、何に?」
「来週の七夕まつり。そっか知らないか、ここいらでは有名な祭りなんだ」
短冊や風鈴が飾られて、締めの花火は町一番とまで言われるほど毎年たくさんの人で賑わう歴史あるお祭りが、この町にはあるらしい。
たったそれだけの説明で、かき氷やラムネ、射的に金魚すくい、浴衣を着てカランコロンと下駄の音。
すでに私の頭のなかはお祭り気分だった。
「そんなのあるんだ…!行きたいっ」
「でもウチ、今年むりっぽいんだよな……。モロ練習試合がダブってる」
「え…」
期待を込めてスケジュール帳を確認したけれど、雅は舌打ちを響かせつつ苦い顔をして首を横に振った。
「くっそー…、ちょっと遅くなるけど、そのあとでもいい?」
「えっ、それは悪いよ…!疲れてるだろうから!」
「でもゆら、祭りに行くような友達はウチくらいしか居なくね?」