お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。
高校2年生になる前の春休み。
新学期が始まるまで1週間を切ったところで、それまで母親とふたりで暮らしていたマンションとはさよならをした。
ちょっとの寂しさはあったけれど、今日から迎える新たな生活の期待のほうが勝っていて。
ウキウキ、ドキドキ、きゅーっと胸が苦しくなりながらも、新しい家族となる人たちが待ち構えてくれる隣町の一軒家へと向かった。
「七兎(ななと)くん、どんな子だろう…!なにが好きかな?このマドレーヌ美味しいから食べてくれたらいいなあ」
「ふふ、弟ってよりは友達みたいな感覚で接すればいいと思うわ」
「でも私は一応は年上のお姉さんだし、家族になるから!お姉ちゃんとして悩み相談とか、ぜったい乗ってあげるんだ~」
「そうね、ゆらなら安心だわ」
城崎 ゆら(しろさき ゆら)、16歳。
お母さんが新しい人と再婚したことにより、今日から私に義弟(おとうと)ができるらしい。