溺愛執事と極上生活
「………」
「………」

「……はい。では、またお昼休みにお迎えに参りますね!」

毅登は美間の言葉を思いだし、微笑んで言った。

「はい」
微笑み頷く、風葉。

「敷波さん、行きましょう」
「え!?し、しかし!」
「いいんです!
行きましょう」

目ふせして、敷波を促す毅登。
敷波も、何かを察し頷いた。

去っていく二人を見届けて、風葉と毬音も教室に入った。


「━━━━━あのような方、初めてです」
執事科に向かいながら、毅登に言う敷波。

「だよなぁ…」
「はい。僕達を見送るなんて…
それに毬音様を幸せにしろと言われるのはわかりますが、僕にお祝いまで…
この世界では、あり得ません。
特に芥田神様はご令嬢の中でも、トップクラスの方です。
例え僕が毬音様と結婚しても、芥田神様は僕にとって高貴な方。
もっと、あり得ないです!」

「でも、風葉様にとっては“普通”なんだ」

「芥田神様と名高さんは、ご婚約されてるとかではないですよね?」
「あぁ。昨日、執事として契約していただいた」

「芥田神様は、ご主人様ですよ?」

「あぁ。俺の大切なご主人様だよ。
だから、あの方の常識に合わせる。
あの方が“白”と言えば“白”
“黒”と言えば“黒”だ」

毅登の敷波を見据える視線。
その力強さに、敷波は口をつぐむのだった。



「━━━━━━ほんと、風葉さんって不思議!」
毬音が、両肘をついて言った。

「え?」
「執事を見送りたいなんて……!」

「やっぱ、ダメだよね……」
「うーん…ダメってことはないわよ」
「なかなか、慣れなくて……」

「でも、風葉さん。
やっぱり将来は、名高様と……/////」

「え////いや、そ、そんなこと……/////
おこがましい…////」

「そうかしら?
名高様も、まんざらでもないのかもよ?」

「え?」

「だって……あんな名高様、初めてだわ!
風葉さんの手を取ったり、あのうっとりしてる視線も、声色も……全部、見たことがないわ!」

「……/////」
そんな風に言われると、意識してしまう。


本当に、おこがましいと思っている。
自分のような何の取り柄もない“普通”の女と、毅登のような高貴な執事。

主従関係でいられれば、それだけで十分だ。


それだけで━━━━━━
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