溺愛執事と極上生活
「え?あ、はい」

「そっか!
ねぇ、俺にエスコートさせてよ?」
「え?え?」
亜嵐に手を取られ、引き寄せられた。
そして、腰を抱かれる。

「行こ?」
「あ、あの!/////」

「ん?」
「私、名高さんを待ってるので!」
亜嵐を押し返しながら言った。

「は?誰?」

「え?名高さんは、私の━━━━━」
また、誰かにグッと引き寄せられた。

そして抱き締められる。
まるで、敵から守るように━━━━━━

「僕のご主人様に、何かご用でしょうか?」

毅登の声が頭の上からする。
しかし、いつもの柔らかな声じゃない。

毅登とは思えない、冷たく重い声だった。


「エスコートして差し上げようとしただけだよ?」

「さようですか。
しかし、もう必要ありません。
お気遣い、誠にありがとうございます」

「君は、風葉の執事なんだよね?」
「はい」
亜嵐は、毅登の左耳を指で弾いて言った。
毅登はそんな亜嵐を睨み付け、亜嵐の手を振り払って返事をする。

「執事の分際で、俺に指図するなよ」

「は?」

「俺が誰か知ってて意見してる?」

「武神 亜嵐様ですよね?」

「フフ…知ってんだ(笑)」

「はい。武神様を知らない人間はいませんから」

「でも、風葉は知らなかったみたいだよ?(笑)」

「風葉様は、元々この世界にいた方ではありませんので。
━━━━━━というより、ご存知なのでは?」

「そうだな」

「…………もう、よろしいでしょうか?
暖かくなってきたとは言え、まだ外は冷えます。
風葉様を、中にお連れしたいので」

終始亜嵐に鋭く突き刺すような声で言って、腕をといた毅登。
風葉の頬に触れた。

「風葉様、申し訳ありません。
あぁ…頬が冷えてきてますね…
すぐに、温かいお飲み物をご用意しますね!」
亜嵐への声色とは正反対の、いつもの優しく柔らかな声で言った毅登。

腰を抱いて、会場へ誘導した。


「………」
そんな二人の後ろ姿を見ていた、亜嵐。

何かを思い立ったように微笑んで、亜嵐も会場に足を進めた。

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