溺愛執事と極上生活

会場に入ると、一気に注目を浴びる風葉。

こんな経験をしたことのない風葉は、途端に身体を強張らせた。
(なんか、怖いよ……見ないでぇ……)

思わず、毅登のジャケットを握りしめた。

すると、その上から手を包み込むように握った毅登。
｢大丈夫ですよ！僕がお傍にいますからね！｣
微笑み言った毅登を見て、風葉は心が穏やかになるのを感じていた。

｢はい。
……………名高さん｣
｢はい｣
｢いつも、ありがとうございます！｣

｢え……？｣
｢名高さんが傍にいてくれると、とても安心するんです！
だから、ありがとうございます！｣

微笑み言った風葉。
毅登は、心を更に鷲掴みされたように痛みを感じていた。

｢………違う…俺の方が…傍にいたいんだ……｣

｢………え？何ですか？すみません、聞き取れませんでした｣
出席者達のざわざわした声で、呟く毅登の声が聞こえなかった風葉。
毅登に耳を寄せる。

｢いえ…
それよりも、温かいお飲み物をお持ちしますね！｣
｢あ、はい｣

毅登が一度、風葉の傍を離れる。

すると、図ったかのように亜嵐が声をかけてきた。
｢風葉｣
｢え？あ、武神さん｣

｢亜嵐！！｣
｢え？｣
｢亜嵐って呼んで？風葉｣

｢あ、はい。
亜嵐さん｣
亜嵐を見上げ、微笑み呼ぶ風葉。

｢わ…/////なんだ、これ…////｣
｢え？｣

｢名前呼ばれるだけで、ドキドキする/////｣
｢え……｣

｢ねぇ、風葉…
俺と━━━━━━｣
｢風葉様！！｣

｢え？あ、名高さん！｣
｢お飲み物をお持ちしました！どうぞ？｣
そこに毅登が戻ってきて、紅茶を渡してきた。

｢あ、はい。
ありがとうございます！｣
｢あと、主催者様にご挨拶した方がいいかと……｣

｢あ、そうですね！
…………ちょっと待ってください。
亜嵐さん、先程何か言いかけてましたよね？｣
毅登に断りを入れ、亜嵐に向き直る。

｢うん。
俺と、デートして？｣
｢え？で、デートですか？｣

｢うん。
風葉の母上の話、聞きたい。
親父に、聞かせてあげたいし｣

｢あ…そうゆうことなら……喜んで！
亜嵐さんのお父様のこと、母は気にかけてました。
裏切っておいて失礼だけど、やっぱり幸せになってほしいって。
だから、私も亜嵐さんのお父様のお話聞きたいです！｣

連絡先を交換する、風葉と亜嵐。

その二人の姿を、殺意に似た嫉妬心に心を燃やしながら、毅登はただ…見ていた。