溺愛執事と極上生活
それから風葉と毅登は、風葉の部屋に移動した。

「改めまして、風葉様。
本日から、よろしくお願い致します!」
丁寧に頭を下げた、毅登。

顔を上げた毅登は、心底嬉しそうに微笑んでいた。

風葉は必死に言い聞かせていた。

本当に“光栄なお話”なんだろうか。
いや、そんなわけない!
こんな素敵な人が、私なんかの執事なんて。
きっと、お祖父様に言われて“しかたなく”なんだ。
浮かれちゃダメ!ダメ!ダメ!━━━━━と。


「風葉様?」
「は、はい!」

「僕、何かお気に障ることしましたでしょうか?」

「へ!?」

「それとも、やはり先程のキスにご気分を害されたとかですか?」

「え?」

「申し訳ありません!
風葉様に選んでもらえたことがとにかく嬉しくて、つい…あのような暴挙に……
もう、二度とあのようなことを致しませんので、どうかご機嫌を直して頂けませんか?」

「…………嬉しい?」

「え?」

「今、名高さん。嬉しいって……」

「はい。
風葉様が、星鈴川学園に来られた日にお見かけして、その…/////
一目で心が奪われました。
この方に仕えたいと━━━━━」

「嘘…/////」

「本当のことです。
僕は、色々な方々から執事の依頼が来てたんですが、なかなか仕えたいと思う方に出逢えなくて……
風葉様は、やっと出逢えたご主人様なんです。
なので、どうか……僕に、一生…守らせて頂けませんか?
もちろん…途中で不要と感じたなら、捨て置いていただいて構いません。
それまでは、僕に仕えさせてください……!」

すがるような、毅登の言葉と視線。
風葉の答えは、一つだけだ。

「━━━━━いします」
「え?」

「お願いします。名高さん。
庶民同然の私で良ければ、よろしくお願いします」
風葉が、頭を下げる。

毅登の目が見開かれた。

抱き寄せたい━━━━━
今すぐに抱き寄せて、おもいきり抱き締めたい。

毅登は、思わず風葉を抱き寄せようとした手をゆっくり下ろした。

執事として、認めてもらえたばかりだ。
ここで、嫌われたら………

毅登は頭を横に振り、優しく風葉の肩に触れた。
「お顔を上げてください。
僕のような者に、頭を下げる必要ありません。
風葉様。
こちらこそ、末長くお願い致します!」

そう言って、風葉の足元に跪き微笑んだ。
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