こじれた俺の愛し方

“俺”という人間

 俺はよく他人から、ネガティブだと言われる。雰囲気も暗いという。
 しかし一体、この世の何に期待できるというのか。

 俺は『黒川定紀(テイキ)』。
 二十代も、もうすぐ半ば。

 容姿はそれほど悪くないらしいが、近付いてきた人間すらも俺からそのうち離れていく。

 俺はヤンキーでも、反社会的な立場の人間でもない。しかし近づいてきた奴らいわく、俺は“怖い”らしい。
 時々、人を強く拒絶するような雰囲気が出ているという。

 …近付いてこなければいいのに。
 皆、俺の前からいずれいなくなるのなら。

 もう誰も、俺に近付かなくていい。

 俺はいつからか、近付いてきた相手を試すようになった。
 こいつはどのくらいで俺のもとから去るのだろうか、と。

 もう試さずに、いられない…



「…なあ、アイツに知られるのは嫌なんだろ…?どうなんだよ…?」

 俺と付き合ってたった数日の“彼女”を、わざとらしく抱き締めた。

 そちらからは見えない場所にいるが、そこには復縁を望んで約束の場所に待機をしている、彼女の元彼。

 見るからにとても優しそうな男だ。
 自分の今までの不甲斐なさを彼女に詫びるために今日、俺とすでに付き合っているとも知らずに彼女と会う約束を取り付けた。

 俺はそれを偶然知ってしまったのだった。

 彼女は元彼を忘れようとしていたのだろう。忘れるためだけに、別れてすぐに俺のもとに来た…
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