こじれた俺の愛し方
 願ってもないことだった。
 もしかしたらまだ彼女と何度か会うことができるかもしれない。

『お礼のものをお渡ししたいんです…お時間は頂けませんか…?』

「お礼…?ああ…」

 俺に礼…?
 そんなこと、今まで誰にもしてもらったことがない。
 それはきっと俺が他人に興味が無かったせいもあるだろうけれど、俺に何かしてくれようとした人間なんて…

「…ありがとう。いつ空いてる?俺は夜九時過ぎならいつでもいい」

 期待なんかしたって…
 そうは思っていても少しの希望が膨らみ始め、抑えていられずに口からそんな言葉がこぼれる。

「…本当に、俺に会いたいか…?」

 さらに思わずそう呟く。
 しかし彼女はその呟きには気付かなかったらしい。無邪気に声を弾ませた。

『良かったです!!…明日でもいいですか?なるべく早めに…あ、日曜日ですしお忙しかったら…』

「大丈夫だ。じゃあ夜九時半、駅前で」

 俺がそういうと彼女は何度もまた俺に礼を言い、そして電話を切った。


 これ以上続けたら、俺の理性が壊れてしまうかもしれなかった。

 少しくらい願ってみてもいいだろうか?
 彼女が大人しく、俺に縛られてくれることを…
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