こじれた俺の愛し方
「…じゃあさ…俺と付き合って」

 俺は冗談めかして言うことができない。
 彼女を仕留めるかのように鋭い目付きのまま、俺はそう言った。

「え…」

 彼女の表情は呆然とし、俺は『しまった!』と思った。
 彼女に、逃げられたくない…

「っ、冗…」

 俺が急いで『冗談だ』そう言いかけると、彼女はその言葉に被るように言った。

「うそ…私の方が、言おうと思ってたのに…」

 …“言おうと”?
 彼女は一体、何を言おうと思っていたと言った…?

 すると彼女は緊張の様子で息を吸い込む。そして一息に…

「…黒川さん、私で良かったら付き合ってほしいんです!黒川さんのことがずっと気になって…好きなんです!お願いします…!!」

 …彼女が…?なぜ…?

「…俺が、怖くないのか…?」

 思わず呆然としたまま口からそんな本心が出てしまう。
 自分から言ったことだったが、彼女から見てどこに、俺と付き合いたいと思える要素があったのだろう?

 しかし彼女は不思議そうな表情で言った。

「黒川さんが『怖い』、ですか…?こんなに私を気に掛けてくれて優しいのに…?」

 …それは、俺が君に興味があるから。

「私…黒川さんのこと、きっとまだよく分からないのかもしれませんが、きっと怖くないですよ…?」

 一応、“それらしく”やれているのか、俺は…
 逃したくない…遠くにいかれたくない…
 だから…

「…俺で、良かったら。黒川定紀…テイキでもいい」

 俺は彼女を自分に縛り付けておきたい。誰のもとにも行かないように。

「テイキさん…はい…!えっと…私は、青沢奈津、です…」

 ナツは嬉しそうに笑った。
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