こじれた俺の愛し方

思いとは裏腹に…

 ナツは両親と最近に死別し、学校に行きながら一人で暮らしているらしい。
 あの『一生懸命に前を見て生きていかないと』という言葉はそういう意味だったのかと納得した。

 そんな中で、ナツはあの男に振られたのか…


 ナツと付き合うことになり、しばらく経ったある日に待ち合わせた駅前でのこと。

「テイキさん、お久しぶりです…!全然会えなかったから…少し寂しかったです…」

 ナツは本当に悲しげで、顔を歪めて今にも泣きそうなのを堪えながら懸命に笑っているようだった。

 久しぶりなのは当たり前。
 俺はナツにどういう顔をして会ったら良いのかが分からず、ナツに会える場所を避けて帰っていたからだ。

 しかし、ナツにこんな顔をさせてしまうなんて…

「…悪かった…その…
「良いんです…テイキさん、お仕事大変なはずだもの…我慢、しないといけませんよね…」

 俺が言い訳をしようと口を開くと、ナツは立ち尽くしたまま呟くようにそう言った。

 ナツだって、学校もバイトもある中で俺に会いたいと思ってくれていたに違いない。
 ナツが簡単に嘘を付けるタイプではないのくらい俺にも分かる。

 今にも消えそうなナツの声。
 ナツまでも、俺の前からそのまま消えてしまいそうだった。

「ナツ…行くな…!」

 急いで抱き締める。

「…どこにも行きません…せっかく、テイキさんに会えたんだから…」

 俺が初めて抱きしめたナツは、俺の腕の中で泣きそうな顔で笑っていた。
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