こじれた俺の愛し方
 俺はきっと今、とても酷い顔をしているだろう。
 表情が卑しく歪んでいるのが自分でも分かる。

 俺はさらに抱き締めている彼女の顎を、元彼のいる方にクイッと向けてやった。

「っ…や、止めてよテイキ…!」

 彼女は、元彼に見つかりはしないかと焦りながら小声で俺にそう返す。

「なんだ…まだお前だって、アイツに気があるんじゃないか…。俺に気があるなら、見つかったって平気だろ…?」

 そうわざとらしく耳元で囁いてやる。

 …こいつも、こうやって俺のもとから…

 俺の心は冷えていく。
 余裕のある、卑しい笑みはここまで。

「…行けよ。さっさと俺の前から消えろ」

 俺は、今まで彼女の前では出したことがないほどの冷たい声でそう言い放つ。

「…。」

 彼女は信じられないといった表情で俺を見たあと、黙って振り返りもせずに俺のもとを去った。


 彼女が俺のもとにいたのはたったの数日間。
 他人なんて口ばかり。何が『好き』だ。

 俺がほんの少し嫌がらせてやれば、そいつはたちまち俺のもとからいなくなる。

 …こんなものだ、他人なんて。
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