こじれた俺の愛し方

自分の中にある恐れ

 そんなことがあってから、俺は職場に申し出て早出勤を多めにしてもらうことにした。

 不定休で時間交代制の仕事だが、早帰りで時間が合うときはナツと帰ることに。
 ナツのバイトの帰りにもなるべく付き添い、家の近くまで送るようにした。

 これもナツを逃さないようにするため。
 ナツを、他の誰にも取られないように…


 ナツの方はあれから、時々俺の顔をしばらく黙って見つめるようになった。
 そして小さく頷き、それからそっと俺の手を握ることがある。
 俺の様子をうかがっているのだろう。

 …俺は、ナツの手を取っても大丈夫なのだろうか…?

 俺の中にくすぶっている密かな衝動が溢れてきてしまう気がして、今までも自分からは実行には移せていない。

 こんなにナツがほしいのに…

 最近は時々、ナツが俺の目の前で消えていく夢を見てしまう。
 子供の頃にしか見なかったはずの夢自体を、ナツに出会ってから再び見るようになった。

 そして俺は夢の中で、消えゆくナツを必死に呼ぶところでいつも目を覚ます。

 いつも俺の夢の中のナツは、俺に囚われていれば泣き、消えていく時は悲しげだった。

 笑ってくれない。
 いつも泣くか悲しげな、俺の夢の中のナツ。

 それでも俺はどうしたら良いか分からないまま、現実のナツを逃さないためにそばにいるしかなかった。
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