こじれた俺の愛し方

「助けて」

 次の日、仕事が終わり職場を出ると、なんとナツが必死な様子で俺に駆け寄ってきた。

「た、たすけて…テイキさん……」

 くたびれ、今にも崩れそうなナツ。
 よく見れば髪はパサ付き、服も乱れ、手に持っているのは財布だけ。

「何があった!?」

 俺はナツをすぐに抱き締めて尋ねると、ナツは膝から崩れ落ちる。

「…おじさん、もしここにまで来たら…もう私…助けて……」

 ナツは力無く俺に体を預けたまま黙り込んでしまった。


 俺はぐったりしたナツを抱き抱えたまま駅を目指す。

 一体何があったのだろう?
 ナツの息は上がっていて、どう見ても疲れ切っている様子。おまけに焦って家を飛び出てきたような…

 それに『おじ』と言っていたようだが、“叔父”のことだろうか?
 今までナツから親類のことなど聞いたこともない。
 両親は亡くなったと言っていた。

 何があったのかはまだわからないが、やはりあの時ナツを追い出さなければ良かった。
 俺がもっとナツのことを考えてやれていれば…


 ナツに茶を一口飲ませ、職場の最寄り駅からタクシーに乗って家を目指す。

 それにしてもナツは俺を嫌ってはいないのだろうか?
 俺は先日、会えなかった理由も聞かずに自分の家に連れ込み、怯えさせ、そして追い出した。

 いま衰弱しているのも、あのとき追い出した俺のせいかもしれないのに…
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